さて、2023年10月にピュリナのフードが集団訴訟されました。ピュリナはネスレのブランドですね。日本でも販売されているメジャーなフードです。まあこれアメリカの話なんですけど、この件は色々と知っておくべき事多いかな、と紹介してみる事にしました。
この集団訴訟はリーガルニュースラインが報じていますが、内容としてはピュリナが消費者に誤解を招くような虚偽の記載をしている。具体的には『natural』と表示しているが、硫酸銅、ピリドキシン塩酸塩、メナジオン重亜硫酸ナトリウム複合体など合成したものを使っているじゃないか!?
もしそれを知っていたら購入していないから賠償しろ!って訴訟内容です。
ご存知の通りアメリカは訴訟大国なのでこういうの珍しくはないのですが、『natural』って表記、これ日本でも曖昧なんですよね。和訳すると『自然』とか『天然』になりますが、実は自然とか天然ってワードは基本的に不当表示になります。
これは『ペットフードの表示に関する公正競争規約』第8条にこのように記載されているからです。
第8条 規約第10条各号に掲げる不当表示には次の各号のものが含まれる。
(1) 規約第10条第6号関係 ア 抗生物質など、ペットフードには通常使用されない原材料や添加物等について 不使用、無添加である旨を強調することで、品質等が優れているかのように誤認 されるおそれがある表示
イ 客観的根拠に基づかない「天然」、「自然」等の表示
だから『自然素材ドッグフード!』みたいなものはあまり見かけない。でも『ナチュラル』とか『なんとかネーチャー』って表現はわりと見かけますよね。これについて栄養バランス上欠かせないビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類のみに化学的合成物を使用しているものについては表示する事が可能なんですよ。
※ただし同時にミネラル、ビタミン、アミノ酸などの添加については、その旨がわかるように併記する事が必要。
つまりナチュラルフードって言っていても厳密には使用している原料全てが自然由来のものではない(事がほとんど)。ビタミン、ミネラル、アミノ酸などは合成のもの使っている、って事です。
今回はそんなナチュラルフードについて考えていこうかと思います。
ナチュラルフードと記載できる具体例|ニュートロナチュラルチョイス
メジャーなフードでニュートロナチュラルチョイスってドッグフードがありますが、思いっきり『ナチュラル』って使っています。
もちろんこのフードは100%天然由来の素材って訳じゃない。ビタミン、ミネラルなど栄養添加物については合成のものを使用しています。ニュートロナチュラルチョイス小型犬用チキン&玄米の原材料表示を紹介しておくと・・・
チキン(肉)、チキンミール、大麦(食物繊維源)、エンドウマメ、粗挽き米、玄米(食物繊維源)、鶏脂*(オメガ6脂肪酸源)、タンパク加水分解物、米糠、オートミール、亜麻仁(オメガ3脂肪酸源)、ビートパルプ、チアシード、ココナッツ、トマト(βカロテン源)、乾燥卵、パンプキン、ケール、ホウレンソウ、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、コリン、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸)、ミネラル類(カリウム、クロライド、セレン、ナトリウム、マンガン、ヨウ素、亜鉛、鉄、銅)、アミノ酸類(メチオニン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸) *ミックストコフェロールで保存
赤字の部分が合成物です。で、これら栄養添加物に合成物を使用しているが、『ナチュラル』って記載できる理由がこれ↓
こいういう理屈で『ナチュラル』表示できているって事です。
わかりやすいのでニュートロナチュラルチョイスを例にしてみましたが、ほとんどのドッグフードはビタミン、ミネラル、アミノ酸については合成物、と思って下さい。ただこれは仕方ない面もあります。
原材料だけで犬にとって必要な栄養素を満たすのってかなり難しい。日本だとAAFCOの基準値を満たしたものが『総合栄養食』として販売できますが、AAFCOの基準値を満たそうとするとどうしてもこれら添加物が必要になってきます。
逆に言えばビタミン・ミネラル・アミノ酸を添加してしまえばAAFCOの基準満たすのは簡単なんですけどね。
『natural』以外にも曖昧な表現『無添加』の意味|無添加なのに添加物入っている理由
『ナチュラル』という表現に似ているものとして『無添加』があります。これおそらく無添加フードの事を完全無添加と勘違いしている方が多い。
無添加についても『ペットフードの表示に関する公正競争規約』にルールが記載されているので紹介しておきましょう。
「無添加」、「不使用」又はこれらに類似する用語は、無添加である原材料名等が明 確に併記され、かつ、当該原材料につき、次のア又はイの基準を満たす場合に限り、表 示することができる。
ア 添加物以外の原材料に係る表示については、ペットフードの全ての製造工程に おいて当該原材料が使用されていないことが確認できる場合
イ 添加物に係る表示については、当該添加物につき、ペットフードの表示のため の添加物便覧に記載された添加物(加工助剤、キャリーオーバー及び栄養強化目 的で使用されるものを含む。)を一切使用していないことが確認できる場合
これ読んでもわかりにくいですよね。今は添加物の話なので『イ』が該当するのですが、要するに添加物について無添加と記載する場合、その添加物の名前が併記されていればOK。
って書いてみたけどまだわかりにくいですね。実例で説明します。国産のプレミアムドッグフードで有名な『このこごはん』ってのがありますが、公式サイト上のこの説明は一見すると完全に無添加、って思ってしまいますが、『凝固剤』が無添加なだけです。
ちなみにドッグフードの粒を作るために凝固剤なんぞ使わなくても形になります。炭水化物(デンプン)がつなぎの役割しますからね。
さらにこのこごはん公式サイトのよくある質問でこのような一文があります。
Q:添加物は使用していませんか?
A:このこのごはんには香料・着色料・保存料・防カビ剤・増粘剤・発色剤・酸化防止剤(BHA・BHT)を使用していません。
(天然の食材だけでは、1日に必要な量を補うことが難しいためビタミンとミネラルのみ合成のものを使用しています。)
『香料・着色料・保存料・防カビ剤・増粘剤・発色剤・酸化防止剤(BHA・BHT)』が無添加なだけであって、ビタミン、ミネラルが合成のもの使っていると認めていますね。
で、酸化防止剤にカッコ書きして(BHA・BHT)とわざわざ書いています。これなぜか??もちろん発がん性があって危険と言われているBHA・BHTを使っていない、って意味はあります。
でも酸化防止剤使っているんですよ。
鶏肉(ささみ、レバー)、玄米、大麦、ビール酵母、鰹節、米油、乾燥卵黄、鹿肉、まぐろ、青パパイヤ末、モリンガ、さつまいも、わかめ、昆布、乳酸菌、セレン酵母、L-トレオニン、ミネラル類(牛骨未焼成カルシウム、卵殻未焼成カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グルコン酸亜鉛、ピロリン酸第二鉄、グルコン酸銅)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB12、パントテン酸カルシウム)
ビタミンEですね。調べてもらったらわかりますが、ビタミンEは強い抗酸化作用があり酸化防止剤として使われています。他のドッグフードだとミックストコフェロールって表示されている場合もありますが、これビタミンEの事です。
ビタミンE自体は危険なものじゃないですよ?植物の種子などに多く含まれる自然由来のものです。
が、このように表記すると酸化防止剤使っていません感が出てくる。なんかイメージ良くなってくる。って事ですね。
『このこごはん』の公式ページってこういう表示とか薬機法関連に引っかからない、その上でイメージを良くする表現がめちゃくちゃ上手い。運営元が株式会社オモヤって会社なのですが、ここってペット関連だけじゃなく、化粧品など美容関連や健康食品などのEC事業、そして広告運用を主な事業としている会社です。
そういうノウハウがあるからあの公式サイトの文章が作れるんだな、と。
今回わかりやすいので『このこごはん』を例にしましたが、基本的にどのドッグフードもビタミン、ミネラルについては合成のもの使っています。このように無添加感をやたらとアピールしていてもあなたのイメージの『無添加』とは異なる場合があります。
本当の意味で『ナチュラル』で『無添加』のドライフードってあるのか??
『ナチュラル』、『無添加』について説明してきましたが、こういうのってマーケティング要素がかなり強い。実際に勘違いしていた方も多いのではないでしょうか?
ただね、合成のビタミン・ミネラルが危険なもの、って事ではないです。これらは熱に強かったり、吸収性が良かったりとメリットはあります。ただ『添加物』というワードを使うとイメージが悪くなる、ってだけです。
とは言え中には人工の添加物は絶対にNGって方もいます。当サイトではドッグフードのお悩み相談をしていますが、そういう考えの方って案外多い。
確かにね、ビタミン・ミネラル系って中国産が多い・・・あの国は2007年にあったメラニン混入事件とか過去にエゲツない事していますからね。できれば避けたい気持ちはわかります。原材料表示にビタミン・ミネラルの産地なんて書いてませんし・・・
主原料・副原料がチャイナフリーであっても添加物が中国産・・・って事は多々あります。
という訳でマーケティング要素の強いなんちゃってナチュラルな無添加フードではなく、本当に自然由来のものしか使っていないフードってあるのか??
あるにはあります。
それ系のフードは当サイトとしては『CARNA4』ってカナダ産のフードをオススメしていきたい、と考えていたのですが、カナダの鳥インフルエンザの影響で供給がめちゃ不安定なんですよ・・・
日本の正規代理店にペット博大阪で話聞いてきたのですが、農林水産省へ掛け合ってはいるが未定みたいです。
鳥インフルエンザの影響により、アカナ・オリジンのような高温・高圧で加工されるエクストルーダーで製造されているフードは規制されていないが、オーブンベイクなど低温加工のものは制限されている。ロータスというフードが終売になってのもこれが原因。
安定供給されているものだと『アランズナチュラルドッグフード』ですね。
これはあの『モグワン』と同じくレティシアンが販売元です。レティシアン系って広告色が強いので意外に思われるかも知れませんが、このアランズナチュラルフードはイギリスの『Natural Dog Food Company』が製造したレティシアンのオリジナルフードです。
→Natural Dog Food Company公式サイト
Natural Dog Food Companyって人工のもの一切使いませんよスタイルで、フードの加工方法も低温、低圧の蒸気調理、とかなり良い。イギリス現地で販売されているものと若干粒のサイズや配合内容が異なるのですが、レティシアンが日本向けに製造委託したものが『アランズナチュラルフード』って事。
製造委託している件についてはレティシアンに直接問い合わせて確認取りました。
これはまあ成分値が合っていると感じるならアリかな、と。
ラム40%(生ラム肉25%、乾燥ラム肉10%、ラムオイル4%、ラムグレイビー1%)、サツマイモ、レンズ豆、そら豆、ひよこ豆、野菜類、亜麻仁、エンドウ豆繊維、ビール酵母
タンパク質:19.25%以上、脂質11%以上、灰分:8.5%以下、粗繊維:8.25%以下、水分:9%以下
オメガ3脂肪酸:1.31% オメガ6脂肪酸:1.47%
カロリー:342kcal/100g
あと国産だとドッグフード工房もそれ系ですね。
ただこれらフードはタンパク質、脂質共に高くなく、運動量激しめのワンコにはやっぱり向かないかな、とは感じます。
CARNA4はタンパク値30%、脂質15% 前後とかなりしっかりしたスペックで完全無添加。個人的にはこれが好みなのですが、供給面がね・・・
また良いフード見つけたら記事更新しておきます!
ナチュラルフードや無添加フードは勘違いしやすい。意味をしっかり理解しておきましょう
今回はピュリナの集団訴訟から『ナチュラル』や『無添加』というわかりにくい表現について解説してみました。
ピュリナはAAFCOのガイドライン守っているし、悪いか悪くないかで言えば悪くない、とは思います。ただしルールを守っていても消費者に勘違いを生じさせる事もある。同じケースで日本では訴訟にまではならないでしょうけどね。
納得できるフードを見つけるためにも『ナチュラル』『無添加』はどういう意味で使われているのか?それは知っておいた方が良いと感じこのような記事を書いてみました。
またこういう海外のニュースって日本にあまり入ってきませんし、需要がありそうならこのような内容の記事も今後投稿していこうかと思っております。
では今回はこの辺で。こちらにオススメのフードをまとめておりますので、良かったら参考にしてみて下さい。
→ドッグフードおすすめランキング表|6項目で公平な評価をしています