今回はテーマは『総合栄養食』について。
おそらくほとんどの飼い主さんは『総合栄養食』という言葉自体は知っているはずです。ただ詳しく説明できるか?そう問われると自信がないのではないでしょうか??
総合栄養食の定義は一般社団法人ペットフード協会によりこのように定められています。
総合栄養食
犬又は猫に毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフードと水だけで、指定された成長段階における健康を維持できるような、栄養素的にバランスのとれた製品
つまり総合栄養食のドッグフードと水を与えておけば健康を維持できる。こういう意味ですね。では総合栄養食と認められる基準とは?これは日本の場合、AAFCOの基準を満たす必要があります。
AAFCOとは
AAFCO(読み方:アーフコ、アフコ)とは、全米飼料検査官協会(The Association of American Feed Control Officials)の略称。ペットフードの栄養基準や原材料、表示に関する基準を公表している米国の団体。
まとめると、AAFCOというアメリカの団体が推奨しているドッグフードの栄養基準があり、この基準値をクリアしているフードが総合栄養食として販売できる。こんな感じですね!
ここまでが基本的な知識です。ですがもう少し深掘りして『総合栄養食』について知っておきましょう。
総合栄養食の基準となるAAFCOの基準値とはどんなものか?
まず総合栄養食として認められるためにクリアしないといけないAAFCOの基準値について紹介します。特に重要なのはタンパク質と脂肪について。細かな数値は覚えなくて良いですが、一応紹介しておきますね。
AAFCOのタンパク質基準値について
最低値(%) | ||
栄養素 | 成長期(パピー) | 維持期(成犬) |
粗タンパク | 22.5 | 18.0 |
アルギニン | 1.0 | 0.51 |
ヒスチジン | 0.44 | 0.19 |
イソロイシン | 0.71 | 0.38 |
ロイシン | 1.29 | 0.68 |
リジン | 0.90 | 0.63 |
メチオニン | 0.35 | 0.33 |
メチオニン+シスチン | 0.70 | 0.65 |
フェニルアラニン | 0.83 | 0.45 |
フェニルアラニン+チロシン | 1.30 | 0.74 |
トレオニン(スレオニン) | 1.04 | 0.48 |
トリプトファン | 0.20 | 0.16 |
バリン | 0.68 | 0.49 |
※乾物物質基準 |
AAFCOの基準は成長期と維持期で基準値が違っており、パピー期の方が栄養基準値が高く設定されています。
仔犬の頃からお迎えした飼い主さんだと実感あるかと思いますが・・・ワンコって気づいたらすぐ大きくなっているじゃないですか?パピー期は体を維持するための栄養素に加え、体を成長させる栄養素も必要になります。
なのでそれ以上大きくなる必要のない維持期(成犬)より多くの栄養素が必要になる。パピー用のドッグフードが成犬用に比べて値段が高いのはそういう理由です。
AAFCOの話に戻すと、まずドッグフードの品質を評価する重要な項目のタンパク質について。ここはちょっと詳しく解説しておきます。タンパク質とは様々なアミノ酸がつながった高分子化合物。アルギニンとかヒスチジンなどはアミノ酸の名前です。
で、表に何で黄色のマーカーを引いたか?これって犬にとっての必須アミノ酸なんですよ。必須アミノ酸とはつまり体で合成できないため食べ物から摂取するしかないやつです。ちなみに必須アミノ酸は10種類あります。
AAFCOのタンパク質基準値ってタンパク質の数値もそうですが、必須アミノ酸の最低限必要な数値を定めている・・・とも言えます。
おお、なんかちゃんとしているな!!って思いません??
ですがこれには罠があります!
アミノ酸バランスを考慮していない!!
わかりやすく言うと、原価の安い植物性タンパク源を雑に配合してもこの基準って簡単にクリアできます。本当に重要なのは犬にとって最適なアミノ酸バランスはどういうものか??って話なんですけどね。
AAFCOの基準値ってあくまで最低限必要な数値であって、アミノ酸のバランスが滅茶苦茶でもクリアできます。実際に格安のトウモロコシまみれドッグフードでも総合栄養食として販売されているでしょ?
最適なアミノ酸バランスはやっぱり動物性タンパク源。つまり肉や魚です。当サイトでも使用原料を評価する場合、タンパク源は動物性タンパク質主体である事を高評価しています(療法食を除く)。その理由がこれです。
なんかAAFCOの基準をクリアしています!!って大々的にアピールしているドッグフード多いですけど、これ別に難しい事でも何でもない。最低限クリアすべきレベルの話なんですよ。
あともう1つ勘違いしやすいポイントとして、AAFCOの基準って『乾物重量』です。乾物重量とは水分がない状態での数値。ドッグフード(ドライフード)って水分10%前後は含まれているので計算し直す必要があります。公式はこれ↓
公式
(表示上のタンパク値)÷ (100−表示上の水分値)× 100=乾物重量
ドッグフードの裏側に記載されている成分表示でタンパク質20%、水分10%だったらこの公式に当てはめると・・・
(20)÷(100−10)×100=22.2%
当然ですが水分飛ばすとタンパク質の割合が高くなります。ドライフードの場合はあまり気にする必要ありませんが、ウェットフードは水分80%くらい含まれているので混乱する人多いんですよ。なんでこんなにタンパク質低いの!?ってね。
例えばソーセージみたいな形しているブッチってあるじゃないですか?ブッチのホワイトレーベル(チキン主体)の成分値ってこれなんですよね。
粗タンパク質 10.5%以上、粗脂肪 8.0%以上、粗繊維 1.0%以下、水分(最大) 74.5%
パッと見るとタンパク質低い!!って思いません??これを先程の公式に当てはめると・・・
(10.5)÷(100−74.5)=41.2%
めっちゃ高タンパクなんですよ。ウェットフードもAAFCOの基準クリアで総合栄養食として販売されていますので一応説明しておきました。
まとめると・・・AAFCOの基準値は必要な栄養素の最低限必要な数値であって、アミノ酸バランスまでは考慮されていない。そして乾物重量で記載されているので、ドッグフードの成分値と見比べてもダメ。計算し直す必要がある。特にウェットフードは大幅に数値が違ってくるので注意。
何が言いたいかというと・・・総合栄養食だから安心!って訳じゃないって事ですね。
AAFCOの脂肪基準値について
次に脂肪について。脂肪についても重要なのでちょっと長くなります。
最低値(%) | ||
栄養素 | 成長期(パピー) | 維持期(成犬) |
粗脂肪 | 8.5 | 5.5 |
リノール酸(オメガ6) | 1.3 | 1.1 |
αリノレン酸(オメガ3) | 0.08 | - |
EPA+DHA(オメガ3) | 0.05 | - |
リノール酸+アラキドン酸:αリノレン酸+EPA+DHA | 30:1(最大値) | 30:1(最大値) |
タンパク質と同じように脂肪についても必須脂肪酸というものがあります。脂肪酸ってのは脂肪を形成する成分の事です。
犬にとってはn-6系(オメガ6)とn-3系(オメガ3)が必須脂肪酸となります。
これも必須脂肪酸だから数値をクリアしていれば良い・・・って話ではなく、そのバランスが重要なんですよね。n-6系脂肪酸は必須脂肪酸ですが、炎症作用を促進する効果があり、摂取しすぎは良くない。なので抗炎症作用があるn-3系を同時に摂取。このバランスが重要です。
バランスが悪いとアレルギーなど炎症性疾患を発症しやすくなります。
AAFCOの基準値ではn-6系:n-3系の最大許容値を30:1をしていますが・・・30:1はバランス悪い。n-6系が多すぎます。
このバランスをしっかり考えているフードだと5:1とか4:1くらいのバランスにしていますね。
よく高級なドッグフードで『サーモンオイル』を配合しているじゃないですか??サーモンオイルはn-3系脂肪酸のDHA・EPAを豊富に含みます。n-3系の配合割合を多くしてバランス調整している、って事です。
この脂肪酸バランスが雑なドッグフードめっちゃ多いんですよね!AAFCOの基準も緩いし、そもそも脂肪酸が成分表示に記載されていない事も多い。
ドッグフードを与えている。よく食べているけど、なんか毛艶が悪い。皮膚の感じが良くない気がする。アレルギーとまでは言わないが・・・みたいな場合、この脂肪酸バランスが悪い事を疑ってみましょう。ドッグフードにサーモンオイルちょっぴりトッピングすると症状が改善するケースがあります。
ちなみにn-3系脂肪酸のDHA・EPAはめっちゃ酸化しやすいので真空のポンプ式がオススメ
AAFCOのビタミン・ミネラル基準値について
タンパク・脂肪はちょっと解説が長くなりましたが、ビタミン、ミネラルについては簡単に流しておきます。
ドッグフードって基本的には原材料由来のものだけでAAFCOのビタミン・ミネラル基準値を満たす事はできません。ほぼ必ずと言って良いほど栄養強化のために合成のビタミン・ミネラルが添加されています。
無添加って言っているけどあれは『合成着色料・合成酸化防止剤』が無添加なだけであって、ビタミン・ミネラルの合成物は普通に使っています。
ネットではSランクだの絶賛されている国産のドッグフードで『このこごはん』ってフードがあります。当サイトではボロクソに酷評しましたがね・・・笑
→国産ドッグフードは『OEM×広告』で信用できない!その理由を『実例』付きで解説
このこごはんはもちろん『無添加』アピールを大々的にしています。では原料表示はどうなっているか?これです。
このこごはん
鶏肉(ささみ、レバー)、玄米、大麦、ビール酵母、鰹節、米油、乾燥卵黄、鹿肉、まぐろ、青パパイヤ末、モリンガ、さつまいも、わかめ、昆布、乳酸菌、セレン酵母、L -トレオニン、ミネラル類(牛骨未焼成カルシウム、卵殻未焼成カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グルコン酸亜鉛、ピロリン酸第二鉄、グルコン酸銅)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB12、パンテトン酸カルシウム)
ライン引いたとこ全部合成のものです。
これが悪いって訳じゃなく、ドッグフードはこういうもの。誤解を招く広告表現がよろしくないだけで、海外製ガチプレミアムドッグフードもビタミン・ミネラルに関しては合成のもの使用しています。
一応、全て自然由来でAAFCOの基準クリアしているものはあります。かなり特殊なフードとなりますが、海外製品なら『CARNA4』ってフード。これは面白いフード。高すぎますけど・・・笑
国産だと『ドッグフード工房』が完全無添加です。
ビタミン・ミネラルについては無理するくらいなら合成のもの使用しても問題ない。当サイトではそう考えています。総合栄養食ならAAFCOの基準を満たすため原料由来の不足分は合成のものを添加して補っている。
ここは深く考える必要なないかと思います。
総合栄養食と一般食の違いについて
上記で『総合栄養食』について解説してきましたが、感想はいかがだったでしょうか??
なんか総合栄養食って・・・緩くない??そう思いませんか??
そうなんです!この記事で言いたい事は総合栄養食だから安心ではない。あくまでも最低限の基準みたいなもので品質が良い事を保証するものではありません。
で、総合栄養食ですらないフード。つまりAAFCOの基準値を満たしていないフードですが、『一般食』や『栄養補完食』、おやつの場合などは『間食』と表記されています。ウェットフードの場合も同じですね。
これね・・・総合栄養食のトッピング、大好物のご褒美をたまにあげる、療法食なので仕方なく何かしらの成分値を抑えている、このように何か理由があるなら良いと思います。
でもメインのフードを一般食や栄養補完食にするメリットってない。総合栄養食ですらこんな感じすからね。
でもいかにも総合栄養食な雰囲気を出して売っているドッグフードあるんですよ。『AAFCOの基準を参考にしています』とかね・・・笑
先ほども言いましたが、ドッグフードで総合栄養食、つまりAAFCOの基準値を満たすのはそこまで難しい事じゃありません。一般成分値はそこまで厳しい基準じゃないし、ややこしいビタミン・ミネラルは合成したものを添加すれば良いだけ。
一般食をトッピング系ではなく、メインのフードっぽく売っているのは何も考えていないか、分析する費用ケチっているだけです。
もう一度言いますが、何かしら理由がない限りメインのフードは総合栄養食にしておきましょう。
補足事項:手作りフードの場合は特に注意しよう!ビタミン・ミネラル系が難しい
最後に補足事項としてちょっと注意喚起。
個人的には究極のわんこごはんは『手作り』だと思っています。ですが当サイトとしてはドッグフードを推奨しています。理由は手作りで必要な栄養素を満たすのは難易度高すぎるからです。
特にビタミン・ミネラル系は難しい。ドッグフードの場合は『プレミックス』と言って不足しがちなビタミン・ミネラルを事前に配合されたものがメーカー向けに販売されています。これを混ぜれば良いだけなので簡単。
でも手作りはそうはいきません。
『手作りフードは長生きする』、みたいな表現を聞くことがありますが・・・これは毎日手作りするだけの時間とお金を愛犬に費やせる飼い主なら何かあったらすぐ病院行くし、そりゃ長生きするだろ!!
って思っています・・・笑
週一とかで手作りフードあげるのは良いと思いますけどね。やっぱ自分で作ったものをバクバク食べていると嬉しい。飼い主としても幸せを感じる。我が家もたまに手作りします!
そんな訳で結局のところは・・・総合栄養食与えてるのが一番安全だと考えています。
しかし何度も言いますが、総合栄養食だから安全ではないので、しっかり原料表示・成分表示は見ましょうね!!
では今回はこの辺で。
もしドッグフード選びで悩んでいるならこちらの記事を参考にして下さい。公平に製品性能を評価して結果でランキング形式にしていますので!!
→ドッグフードおすすめランキング表|6項目で公平な評価をしています