今回は『炭水化物』について。ドッグフードを選ぶ際、タンパク質・脂質などの成分値を気にされる方は多いかと思いますが、『炭水化物』についてはあまり意識していないのではないでしょうか。
今回は犬にとって炭水化物は必要なのか??について解説していきます。
解説とか偉っそうに言っていますが、犬にとって炭水化物が良いものか悪いものかは海外でも意見が分かれる。正解はなくドッグフードメーカー各社によって考え方が異なる・・・そんなイメージですね。
ドッグフード選びで重要なのは『愛犬に合っているか?』と『飼い主が納得できるフードか?』だと考えています。
炭水化物とはどんなものなのか?そしてドッグフードにおいて炭水化物はどのように使用され、犬がどのように利用しているのか?これらを理解するとドッグフード選びやしやすくなりますよ!
では解説していきます。
そもそも炭水化物って何なのか?犬にとって必要なものなのか?必要なものなのか?
まずそもそも炭水化物とは何なのか??簡単に言ってしまえば『糖質+食物繊維』です。犬にとって炭水化物がどうなのか?ではなく、正確には『糖質』がどうなのか??
ここを考えていきましょう。
糖質・・・と言っても「単糖類」「二糖類」「少糖類」「多糖類」「糖アルコール」・・・と色々分類できるのですが、あまり細かく見ても混乱してしまいます。今回はドッグフードの原料に多く含まれる『デンプン』を中心に見ていきましょう。
デンプンとはグルコース(ブドウ糖)が鎖状に何万個もつながった多糖類の一種で、穀物や芋、豆に多く含まれます。つまり・・・ドッグフードの原料ですね。
犬の唾液にはアミラーゼが含まれないが、α化されたデンプンなら消化・吸収が可能
よく犬の唾液には人間と違ってアミラーゼがない。そのためデンプンを分解できない。そんな話を聞いた事あるかと思います。確かにそれはそうなのですが、食べたデンプンはそのままの状態で運ばれ、膵臓から放出されるアミラーゼによってデンプンは分解。
分解されたデンプンはグルコースとガラクトースとなり最終的に小腸で吸収されます。
要するに犬はデンプンを利用できる。またほとんどのドッグフード(ドライフード)はエクストルーダーという機械で製造されており、これは製造工程で高温・高圧で処理されるのでβデンプンがα化デンプンに変化しています。だから利用できる。
人間もそうですが、生米をそのまま食べてしまうと下痢するのはこれが理由ですね。ちなみにドッグフードはエクストルーダー以外の製法もありますが、それらは粒に成形する前に事前に調理するなどしてα化するなど工夫がされています。
エクストルーダーによってα化されたデンプンは99%消化したとこちらの論文では報告されています。このようにデンプンは犬が利用できるので必ずしも悪いものではないという事ですね。
→https://academic.oup.com/jas/article-abstract/77/8/2180/4625546?login=false
犬の祖先はハイイロオオカミ|炭水化物はその食性に合っていないという意見
犬は炭水化物(デンプン)をα化すれば消化できる。しかし炭水化物って否定されがちですよね?その大きな理由が犬の祖先はハイイロオオカミであり、オオカミは当然ですが肉を食べている。
だから炭水化物は食性に合っていない!って意見です。
デンプンが分解されると最終的にはグルコースなど単糖類になりますが、摂取し過ぎると肥満や糖尿病の原因になる。しかし体を動かす重要なエネルギー源でもある。オオカミはどうしているの??
ってなりますが、これは『糖新生』という能力で解決しています。糖新生とはアミノ酸を原料に肝臓でグルコースを生成する事。
人間もこの能力がありますが、断食ダイエットをイメージするとわかりやすいです。断食すると当然ながら糖質を摂取していないので、エネルギー源が足りなくなります。そうすると筋肉や中性脂肪を分解してグルコースを生成。だから痩せる訳ですが・・・
筋肉も分解されているので筋肉量が減る、そして基礎代謝が落ちる。で、リバウンドする、って事ですね。
犬はオオカミが祖先なだけあってこの『糖新生』の能力が高く、タンパク質をしっかり摂取しておけば炭水化物(糖質)は必要ない、って事です。タンパク質を分解したアミノ酸からグルコースを得る事ができますからね。
これが炭水化物不要論サイドの意見。
ただ最近の研究によると犬はオオカミに比べ膵臓アミラーゼの活性が高く、人間と一緒に暮らしていく中でその食性も変化しているとは言われています。肉食寄りの雑食、とか言われるのがその理由です。
ドッグフード(ドライフード)では炭水化物をどのように考えているのか?
犬が炭水化物をどのように利用しているのか?そこを理解したところで、ではドッグフード(ドライフード)では炭水化物がどのように考えられているのか?
冒頭にも言った通り、ここはメーカーによって考え方は異なり、また正解はありません。
炭水化物がある程度必要、って意見の場合は『確かに糖新生の働きで犬は炭水化物が無くてもグリコーゲンを得ることができる。しかしそれは内臓が無理やり変換しているので負担がかかる。だったら最初からある程度炭水化物が含まれている方が良い』これも納得できる。
一方で『タンパク質が分解されたアミノ酸は筋肉、皮膚、被毛、血液など体をつくるために利用されているだけでなく、ホルモンの分泌や免疫機能など体を守る働きもあり非常に重要。炭水化物の割合が多くなってタンパク質が不足する事の方が問題。だってグリコーゲンは糖新生で得られるのだから・・・』これも納得できる。
そうなんです。正解はない。同一犬種であっても性格や飼育環境は異なる。タンパク質の要求量だって異なります。
だからドッグフードに正解はない。どのフードが良いか?ではなく、フードの原材料表示・保証成分をみてどんなフードなのか特徴を理解する。その上で愛犬に合ったものを探す。これが重要と考えています。
ただ実際はここまで考えて配合内容を考えているか?ってなるとそんなメーカーは稀で、動物性原料使うより穀物や豆・芋を使う方が原価安いですからね・・・『かさまし』と表現されたりしますが、コストの関係で炭水化物源が使用されているのも事実です。
今回は『炭水化物』だけを見ていますが、当然ながら穀物、豆、芋などには炭水化物だけじゃなくビタミン・ミネラルの供給源でもある訳でタンパク質も含まれている。それら総合して考える必要があり、これがドッグフードの難しいところでもあり、面白いところ、なんですけどね。
で、この『フードの原材料表示・保証成分をみてどんなフードなのか特徴を理解する』、これについて当サイトInstagramで正しく見るにはどうすれば良いのか?について投稿しましたので、良かったら参考にしてみて下さい。
国産と海外プレミアムドッグフードの『炭水化物量』について比較してみる
では実際に数値を見た方がイメージしやすくなると思いますので、国産と海外産のプレミアムドッグフードを炭水化物量に注目して比較してみましょう。
私が国産プレミアムドッグフードとしてまず思い浮かぶのは『このこごはん』ですね。CMなんかも流れているので名前を聞いた事がある方は多いかと思います。ちなみに私は・・・このフード嫌いです・・・笑
『このこごはん』ゴリゴリのOEMドッグフードなんですけど、内容に対して価格が高すぎる。これが売れるって広告の力は偉大だな・・・と感じます!
海外製プレミアムドッグフードはチャンピオンペットフーズ社の『オリジン』にしました。ペットショップなどでも販売されているフードですし、認知度も十分。海外製プレミアムドッグフードの代表格と言って良いブランドだと感じます。
ちなみにチャンピオンペットフーズ社は炭水化物については否定派です。ただしエクストルーダーでの製造なので多少は炭水化物源を使用せざるを得ない。そこでグレインフリーって観点ではなく、穀物に比べてGI値が低く血糖値の急激な上昇を抑えられる豆類を中心に採用。結果的にグレインフリーになっている。そんなコンセプトのフードですね。
世界的にみればドライフードって90%以上がエクストルーダーという機械で製造されています。この機械で製造する場合、炭水化物源は増粘剤のような役割があり、ドッグフードの粒の形にするため必須です。つまり絶対に穀物や豆、芋などが入っていないと作れません。
つまりエクストルーダー製には必ず炭水化物源が入っていると思って下さい。稀に穀物全般アレルギー、豆や芋もダメ、ってケースがありますがその場合は炭水化物を必要としない製法、フリーズドライやエアドライのフードを探すと良いですよ。
オリジン、そして姉妹ブランドのアカナについては別記事で詳しく紹介していますので興味のある方は読んでみて下さい。
ドックフードの成分表示には記載されていない『炭水化物量』、これを比較すると・・・
ドッグフードの成分表示に『炭水化物量』ってほとんどの場合、記載されていませんよね?
炭水化物って表示義務はなく、また国産も海外製もAAFCOの基準値を採用している事が多いですが、AAFCOには炭水化物についての基準はないです。犬にとって必須ではないからですね。
でも炭水化物ってめちゃくちゃ重要。あくまでも推定値ですが炭水化物は100から記載されている成分値を全て引くと求める事ができます。
画像に『このこごはん』、『オリジン(オリジナル)』の推定炭水化物量を算出してみました。同じエクストルーダー製のドライフードでもこんなに違うんですよ。
もちろんオリジンはドライフードの中でもトップクラスに高タンパク・高脂質なフードですので、一般的なフードだともう少し炭水化物量は上がります。
さて、この数値の違いを見てどう感じたでしょうか?
低タンパク、低脂質なフードを否定はしません。何度も言いますが重要なのは『愛犬に合っているか?』です。でも低タンパク・低脂質って事は何が増えるのか?炭水化物です。
成分表示に記載されていないので意識している方は少ないですが、炭水化物量に注目してみるとより愛犬に合ったフードを見つけやすくなると思いますよ!一度愛犬に与えているフードの推定炭水化物量を計算してみて下さい!
ちなみに参考まで。『このこごはん』の定価ですが3,850円/kgします。オリジン・オリジナルは正規代理店価格だと2kgだと8,800円。kg単価だと4,400円/kg。ただ実際には楽天、Amazonなどネットショップだともう少し安く流通しており、私がよく使うショップだとkg単価3,960円/kgでした。
(3,960円/kgは2kg袋の場合。大袋だともっと単価安くなります)
私がよく利用するショップ、サクラソーケンネル。オリジン以外にも色々と取り扱いありますが、ここで扱っている商品は全体的に良いもの多いです。そして倉庫が温度管理されているのがさらに良し。
このこごはんとオリジンがほぼ同じ単価。闇深いですよね!まあ工場の規模が全然違いますしスケールメリットってのがある。単純に比較はできないのですがそれにしても・・・ってところ。
炭水化物量が多い国産プレミアムドッグフードによくある問題点
当サイトではドッグフードのお悩み相談を主にInstagramのDMでやっているのですが、当サイトの記事を読んで国産プレミアムドッグフードから海外製プレミアムドッグフードに切り替えする方が非常に多いです。
先ほど『このこごはん』の成分値を紹介しましたが、ああいう成分値はこのこごはんだけじゃなく、他にも同じような成分値のフードがプレミアムドッグフードとして多く販売されています。なぜか??
OEMのフードが蔓延しているからですね。中身一緒で商品名が違うフードが大量にあるから。
で、フードを切り替えてどのような変化があったか?感想を頂くことありますが、一番多いのが『体つきががっちりした。筋肉が付いたように感じる』です。
やはり低タンパクで炭水化物量が多い(多過ぎる)フードって筋肉が付きにくい。そりゃそうですよね。カロリーの大半を炭水化物から供給している。筋肉を作る原料はアミノ酸、つまりタンパク質です。それが間違いなく不足しているのでそうなる。
犬の肥満って年々増えていると言われていますが、これフードも大きく影響している気がします。炭水化物量が多いフード。それが合っている犬ももちろんいますよ?
しかしどう考えてもタンパク質が少な過ぎるケースの方が多いと感じます。
AAFCOの基準を満たしている、って言いますがAAFCOの基準値ってあくまでも『下限値』ですからね。最低でもこれ以上はタンパク質を確保しましょう、って意味で基準値をクリアしていれば良いフードって話じゃありません。
※AAFCOのタンパク質基準値は成犬でタンパク質18%以上(乾物計算で)
愛犬が太りやすい、と感じる方は炭水化物量が多すぎないか?ドッグフードの成分表示には炭水化物量が記載されていないのであまり意識しないと思いますが、ここを考えてみましょう!!
ドッグフードの炭水化物について記事を書こうとした理由|自称専門家の存在とネット上の嘘
さて、今回はドッグフードの『炭水化物』について解説してみました。
この記事を書こうと思った理由なんですが、先日SNS上で犬の食事指導をしているらしい自称専門家がこういう投稿をしていました。
海外は大型犬が多いが、日本は小型犬が多い。小型犬には高タンパクなフードが合っていないので様々な病気になる
みたいな内容。そもそも大型犬と小型犬を比べた場合、小型犬の方が代謝速度の関係でより栄養価の高いフードの方が合っているのですが、そこは置いておいて・・・
ドッグフードの成分値は割合です。何かが減れば、何かが増えます。水分量はどんなフードでも(ドライフードなら)そこまで大きく変わらない。低タンパクのフードは同時に低脂質になる事がほとんど。
そうなると・・・低タンパクなフードって高炭水化物なんですよ。ここの情報が抜け落ちている。
またネット上にあるドッグフード解説サイトは炭水化物の情報って全然出さないですよね?なぜか?イメージが悪いから。イメージが悪い情報を出しちゃうと『儲かるフード』が売れなくなりますからね。
本当に犬の健康を考えるなら、低タンパク・低脂質で高炭水化物のフードならそのリスクも伝えるべきとは思いませんか??
別に低タンパクのフードが悪いとは言いません。そして今回紹介した『オリジン』のような超高タンパクなフードが良い、とも言いません。あれはあれで高スペック過ぎるので犬を選ぶと思います。
何度も言います。重要なのは『愛犬に合っているかどうか?』これです。
炭水化物って決して悪ではないが、やはり多過ぎると肥満の原因になる。どれくらいが愛犬にとって許容範囲なのかは我々飼い主が愛犬の体重の増減、体型の変化などをみて探っていくしかないと思います。
また当サイトでは国産のフードについて批判的な内容である事が多いですが、良いフードもあります。国産のプレミアムドッグフードって今回紹介したような『低タンパク・低脂質』なタイプ。それと『やや高タンパク、低脂質』なタイプ。この2パターンが多い。
海外製のプレミアムドッグフードって『高タンパク・高脂質』なものが比較的多く、これは犬の飼育環境が影響しているんじゃないかな?と感じます。
『やや高タンパク、低脂質』は日本の飼育環境だと合っているケースは多いように感じる。当サイトで国産のプレミアムドッグフードだと『金虎 おさかな』をお勧めしているのもそれが理由の1つですね。
では今回はここまで。普段あまり意識しない炭水化物。しかし同じドライフードでも商品によってその配合量は大きく違ってきます。当然ながら犬にとって影響は大きい。ぜひフード選びの際は意識してみて下さい。